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低リスク。安全に利益を狙えるサヤ取りモドキ

別名サヤ取りとも呼ばれる裁定取引は、資産の価格差(サヤ)を利用して利ザヤを稼ぐ取引手法です。個人投資家による株式投資では、異なる2銘柄のペアの価格差に着目してサヤ取りを狙う手法が一般的ですが、ここでは先日偶然に機会のあったETF1銘柄によるサヤ取りモドキ手法を紹介します。

サヤ取り超入門

ファイナンスでの世界では、同一のキャッシュフローを生み出す資産の価格は理論上は同一となります。価格差がある場合には、割高な方で売りポジション、割安な方で買いポジションを持ち、価格差が修正されたところで決済することで利益をあげることができ、この取引を裁定取引またはサヤ取りと呼んでいます。

株式市場では現物と先物の間で裁定取引が行われていますが、この2つの価格は瞬時に修正されるため、個人投資家がサヤを抜くことは不可能です。個人投資家による株式投資では、サヤが周期的に開閉する2銘柄間でサヤ取りをする手法が一般的ですが、過去の値動きが将来も繰り返される保証はなく、サヤが拡がり続けるリスクもあります。

ETFによるサヤ取り

ETFには二つの値段が存在します。一つはETFの純資産総額を示す基準価額で、もう一つは取引所で売買されている取引所価格です。取引所価格は他の株式同様に需給によって変動するため、基準価額とは必ずしも一致しません。一方で、同じものに対する値段ですから、この価格差は必ず修正されることになり、乖離が生じた場合には安全にサヤ取りをすることができます。

とは言っても、基準価格と取引所価格の乖離はせいぜい1%程度ですから、通常はサヤ取りなどできません。また、個人投資家が基準価額で売買をすることはできませんから、市場価格でポジションを取って、市場価格が修正されるのを待つことになります。片側しかポジションを持たないため、基準価額が市場価格に近付くかたちでサヤが閉じる場合には利幅が小さくなるのが、通常の裁定取引とは異なる点です。

インド株式指数上場投信(1678)の値動き

先月9月16日に231円で売却をしたインド株式指数ETFは、その後も順調に上昇を続けていました。売り時を見誤ったことを後悔しながら横目で株価を確認していたところ、10月14日から15日にかけて上昇に拍車がかかり、10月15日の終値は279円となりました。翌営業日の1口あたり基準価額が248.79円だったので、市場価格は基準価格に対しておよそ+12%の乖離となっていました。

1678株価チャート

1678の値動き

取引履歴

私がこの値動きに気が付いたのは週末だったため、18日月曜日に信用売りをすることにしました。ここで大きく張ることができる人が大金を掴めるのですが、、、基準価額を無視して上昇した理由もわからず、さらに吊り上げられることが心配になり、約定価格268円で6000株だけ信用売りをしました。一度、279円まで上昇した場面がありヒヤっとしましたが、その後は期待どおりに下落し、10月21日に250円で買戻しをすることができました。4日間で18円の値幅を取ることができ、107,698円の利益となりました。

1678の取引履歴

1678の取引履歴

濡れ手に粟で小遣い稼ぎができたことはうれしいですが、実際に売り建てたのがわずか6000株だったという点は、今後に向けて見直したいところです。「値下がりが確実」と言えるような場面は何度もありません。チャンスを逃さず、少なくとも5倍、10倍の単位で勝負できるように、失ってもよい投機用の資金を予め別枠で用意しておこうと思います。

ETF急騰はチャンス

ヤフーファイナンス掲示板では、誰かが意図的に吊り上げているのではないかと盛り上がりを見せていましたが、私は単純に誤発注の類ではないかと思っています。大きく値動きがあったのを見て、いろいろな思惑から個人投資家が便乗して多くの買いが入った結果、ここまでの乖離が生じたのではないでしょうか。

仮に仕手筋のような存在があったとしても、日々適正価格が公表され、マーケットメイカーや取引参加者による裁定が可能なETFで、あえて株価操作に挑戦する理由がありません。株価を操作するのならば、もっと簡単な銘柄は他にいくらでもあるでしょう。

実際、大きく上昇したのは10月15日の後場だけです。以降も断続的に買いが入っていましたが、勘違いをした投資家の提灯買いや、空売りの買戻しだったと思います。また、10月22日には口数が500万口増加していますので、取引参加者またはその顧客を経由して火消しをしていたものと考えられます。

今回のイベントでは、需給によってはETFであっても株価が急騰することがわかりました。また、ETFで仕手相場を作ることは考えにくく、乖離した価格は数日もすれば基準価額に戻ることもわかりました。ETFの急騰は、安全に利益を狙えるサヤ取りモドキのチャンスと言えるでしょう。