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Decline of eXperience―不便の世界

三菱UFJ銀行の紙通帳が廃止されます

新たな改悪です。三菱UFJ銀行が新たなサービス廃止を公表しました。紙通帳のお取扱の変更のお知らせ(「通帳に関する特約」の改定)というもので、2024年9月11日より、2年以上通帳に記帳が無い場合、紙通帳の利用を問答無用で自動的に停止するそうです。これは、新たに開設した口座だけに適用される規定ではなく、以前から取引をしている口座も対象になるので要注意です。

紙通帳廃止の影響とは

今のところ、所定の手続きを踏めば、利用再開ができるとありますが、具体的な手続の内容は不明です。あれこれと、再開を希望する側の気力を挫くために余計な手間を強いことが予想されます。さらに、この取扱いに対する変更にも含みを持たせているので、利用者の反応を見て、さらなる改悪も予定しているかもしれません。

預金者はEco通帳を選択していません

三菱UFJは、Eco通帳のキャンペーンを繰り返しています。実際には多くの預金者が通帳のデジタル移行を選択していないのが現状なのでしょう。これは、銀行が顧客の実際のニーズや利便性を無視している証拠と言えるでしょう。利用者が望むのはあらゆるサービスのデジタル化ではなく、より柔軟な選択肢です。三菱UFJは空前の利益を計上しており、増配も続けています。顧客の望むサービスの提供に必要なのであれば、紙を取り扱うコストや印紙税くらい気持ちよく負担をすればよいのではないでしょうか。

Decline of eXperience

それにしても、銀行はなぜそこまで紙を憎むのでしょうか。都市銀行などのリアル店舗型銀行は、支店を閉じ、ATMを廃止し、今度は通帳の強制廃止と、徹底的なサービス縮小を続けています。物理的なサービスを提供できる事業資産を有しているのが、伝統的な銀行のネット銀行に対する強みのはずです。自らその強みを捨て去り、物理的な資産を負債と定義し直してネット銀行に業態をシフトしています。従来型銀行の展開するDXは、自分たちの都合によって利用者に不便を強いるDecline of eXperienceです。

まとめ

銀行がテクノロジーを利用して業務の効率化を図ることは大いに結構ですが、それによって顧客体験が犠牲になってはならないでしょう。今回の改悪をトリガーに、通帳記帳をする人と回数は増加することになると思いますから、銀行にとっては通帳廃止を後退させる悪手だったという評価になるでしょう。三菱UFJ銀行は、預金者からの明確な意思をしっかりと受け止めて、「顧客本位」の業務運営に努めてもらいたいものです。